正しい診断・治療の啓発活動


【第52回】 正しい診断・治療の啓発活動 頭痛

 東京都文京区千駄木にある日本医科大学付属病院の脳神経外科は“必勝の外科より不敗の外科”を目指している。「果敢な手術はときに不幸な転帰を招きます。患者さん個々の人生にとって、最も好ましい治療法を用いるということです」と、同科の喜多村孝幸助教授(52)は言う。

 その喜多村助教授の個人的なモットーは−。「『病を診ず、人を診る』です」。そのモットーを生かして同助教授は専門とする、脳に脊髄(せきずい)液がたまり頭が大きくなる水頭症や、脳に腫瘍(しゅよう)ができる脳腫瘍の治療に取り組んでいる。手術もより患者の身体に優しい方法だ。「神経内視鏡手術を行っています。開頭することなく内視鏡で行う治療です」。

 さらに、難治性の頭痛治療のスペシャリストとしても知られている。頭痛といえばあまりにポピュラーな病気とあって、患者にはどの科でも簡単に診てもらえると思っている節がある。が、実際には内科医には頭痛の知識がなく、多くの患者が正しい頭痛治療がされずにいるのが現状だ。だから、同助教授が担当する「頭痛外来」は行列ができる。

 「患者さんが最初に受けた医療機関で、いかに正しい診断・治療を受けていないかを痛感します」。それでも治療を受けるだけまし。医療不信が患者の市販薬乱用にも結びついている。「医療不信解消に少しでも結びつけばと思い、全国の内科医を対象に、正しい慢性頭痛の診断と治療の啓発活動にも力を注いでいます」。

 そして、同助教授は最後に言った。「一人ひとりの患者さんがもしも自分であったら=Aあるいは自分の家族であったら≠ニ、すべての医師が心に刻んで医療を行えば、医療も随分変わると思います」。

 ◆頭痛の名医◆ 慢性頭痛の患者数は約3000万人と推測されている。ところが実際に医療機関を受診しているのはわずか5%にすぎない。